第3章 / PRICING目安 25分

料金のしくみ

この章でわかること

  • 従量課金の「3つの単位(時間・量・回数)」で、何にいくらかかるかを考えられる
  • 見落としがちな費用と、費用を下げる主な仕組み(予約割引など)を知っている
  • 無料利用枠の現行制度、請求書の読み方、円建て支払い・消費税・適格請求書の扱いが分かる

3-1大原則 ── 使った分だけ、後から払う

AWSの料金体系を一言でいえば従量課金(じゅうりょうかきん、pay-as-you-go)です。携帯電話の通話料やタクシーのメーターと同じで、使った分だけ、月末に締めて翌月に支払うのが基本です。

  • 初期費用なし:アカウントを作っても、何も使わなければ0円。
  • 最低利用期間・解約金なし:今日使い始めて明日やめても、違約金はかからない。
  • 秒単位・時間単位の精算:多くのサービスは使った時間を秒や分の単位で計算する。
  • ドル建て:料金はすべて米ドルで決められていて、支払い時に円に換算することもできる(後述)。

この仕組みは便利な半面、「毎月いくらかかるか、使ってみないと分からない」という不確実さも生みます。エンジニアに「月いくらですか?」と聞いて「使い方によります」と返ってくるのは、意地悪ではなく、本当にそうだからです。ただし、何に課金されるかの原理は単純なので、それを知れば概算はできます。

3-2何に課金されるか ── 3つの単位

200以上あるサービスも、課金の単位は基本的に次の3つの組み合わせです。

時間

動かしていた時間に対して課金。サーバー(EC2)、データベース(RDS)など「借りている間ずっと」かかるもの。

例:1時間あたり ○ドル

量

保存しているデータ量ややり取りしたデータ量(GB)に対して課金。S3の保管料、データ転送料など。

例:1GBあたり月 ○ドル

回数

処理を実行した回数に対して課金。Lambdaの実行回数、S3への読み書き回数、APIの呼び出し回数など。

例:100万回あたり ○ドル

請求書の各行は、必ずこの3つのどれか(または組み合わせ)で説明できます。

具体的な単価の目安(東京リージョン、2026年時点)

以下は、公開されている料金表をもとにしたおおよその目安です。実際の金額はサイズや条件で大きく変わり、料金改定も頻繁にあるため、必ず公式の料金ページで確認してください。

項目単位目安月に直すと
EC2(小さなサーバー、t3.microクラス)時間約 0.0136 ドル/時間24時間稼働で約 10 ドル(約 1,500 円)
EC2(中程度、t3.mediumクラス)時間約 0.054 ドル/時間24時間稼働で約 40 ドル(約 6,000 円)
S3 標準(データ保管)量約 0.025 ドル/GB・月100GB置いて約 2.5 ドル(約 375 円)
RDS(小さなデータベース、db.t3.smallクラス)時間約 0.052 ドル/時間24時間稼働で約 38 ドル(約 5,700 円)
データ転送(インターネットへ出ていく分)量約 0.114 ドル/GB500GB出て約 57 ドル(約 8,550 円)
Lambda(処理の実行)回数+時間100万回あたり 0.2 ドル+実行時間分小規模なら無料枠内に収まることが多い

※ 円換算は1ドル=150円で計算した概算です。「t3.micro」などは EC2 のサイズ(インスタンスタイプ)の名前で、t3 がシリーズ名、micro / small / medium がサイズを表します。

月額の組み合わせ例

  • 小さな個人サービス(小サーバー1台、S3 10GB、転送50GB程度):月 15〜16 ドル(約 2,400 円)前後
  • スタートアップの業務システム(中サーバー2台、S3 100GB、小さなデータベース、転送500GB程度):月 170〜180 ドル(約 26,000 円)前後

この例で分かるとおり、費用の大半は「動かし続けているサーバーとデータベース」と「外に出ていくデータの量」です。この2つを押さえれば、概算の8割は見えてきます。

3-3見落としがちな費用

請求書を見て「思ったより高い」となる原因は、だいたい次のどれかです。

  1. データ転送料(Data Transfer):AWSに入ってくるデータは無料ですが、AWSから外(インターネット)へ出ていくデータには課金されます。動画配信や大量のダウンロードがあると目立ちます。毎月一定量(現在は100GB)までは無料です。
  2. 止め忘れ:検証用に作ったサーバーやデータベースをそのまま放置すると、使っていなくても「借りている時間」の料金がかかり続けます。
  3. 消し忘れたデータ:古いバックアップ(スナップショット)やログは、消すまで保管料がかかります。
  4. 固定IPアドレス(Elastic IP):2024年以降、使っていてもいなくても1個あたり時間課金されるようになりました。小額ですが本数が増えると目立ちます。
  5. サポートプラン:有料サポート(Developer / Business / Enterprise)に入っている場合、利用額の一定割合または定額が毎月加算されます(第4章参照)。
  6. AWS Marketplace の他社製品:AWSの請求に他社ソフトの利用料が混ざって請求されます。別の勘定科目にすべきものが紛れ込んでいないか注意が必要です。

経理・総務の目線

請求書の明細は「サービス名 × リージョン × 使用量の種類」の単位で並びます。最初は行数の多さに圧倒されますが、金額の大きい順に上から5行だけ見れば、どこにお金がかかっているかはほぼ分かります。毎月同じ5行を追いかけるだけでも、異常の早期発見につながります。

3-4費用を下げる主な仕組み

仕組み内容向いている場面
リザーブドインスタンス / Savings Plans1年または3年の利用を約束する代わりに、通常料金から最大7割程度の割引を受ける。前払い・一部前払い・前払いなしから選べる。24時間動かし続けるサーバーやデータベースが決まっている場合
スポットインスタンスAWSの空き設備を格安(最大9割引)で使う。ただしAWSの都合で急に止められることがある。止まっても困らない一時的な計算処理
適切なサイズに見直す(ライトサイジング)性能が余っているサーバーを一回り小さいものに変える。定期的な見直し全般。CloudWatchで使用率を確認して判断
夜間・休日に止める開発用・検証用のサーバーを、使わない時間帯に自動停止する。平日日中しか使わない社内システム・開発環境
保管区分の見直しめったに使わないデータを安い保管区分(Glacierなど)へ自動で移す。長期保存が義務のデータ、古いバックアップ

経理・総務の目線

リザーブドインスタンスやSavings Plansで「全額前払い」を選ぶと、1年分・3年分をまとめて支払うことになります。この場合、支払時に全額を費用にせず、前払費用として計上し、期間にわたって按分するのが一般的な処理です。契約期間と前払いの有無は、エンジニアから必ず情報をもらうようにしましょう。

3-5無料利用枠 ── 2025年7月からの新制度

AWSには、お試しのための無料利用枠があります。ただし、2025年7月15日に制度が大きく変わりました。古い解説記事を読むと「12か月間無料」と書かれていますが、これは旧制度の話です。現在の制度は次のとおりです。

無料プラン
  • 登録時に 100ドル分のクレジット(利用券)がもらえ、指定の活動(学習や設定)をこなすと最大100ドル追加。合計 最大200ドル
  • 利用できるサービスは限定される(90種類以上)
  • 6か月経過またはクレジットを使い切った時点で終了。カードに請求されることはない
  • 終了後、有料プランに切り替えなければアカウントは閉鎖(データは90日間保持)
有料プラン
  • 同じく最大200ドルのクレジットがもらえ、すべてのサービスが使える
  • クレジットを超えた分は通常の従量課金で請求
  • 会社で本格的に使う場合はこちら。複数アカウントの管理機能(Organizations)を使うと自動的に有料プランになる
どちらのプランでも、下記の「常時無料」のサービスは引き続き無料で使えます。

常時無料(Always Free)のサービス例

クレジットとは別に、期間の制限なく一定量まで無料で使えるサービスがあります。小さな仕組みなら、これだけで運用できることもあります。

  • Lambda:月100万回の実行と一定の実行時間まで無料
  • DynamoDB:25GBの保存と一定の読み書き能力まで無料
  • CloudWatch:基本的な監視項目とアラーム10個まで無料
  • CloudFront:月1TBのデータ配信まで無料
  • IAM、Organizations、Budgets(2個まで):管理系の機能は基本的に無料

注意

「無料枠があるから安心」と思っていると、枠を超えた瞬間から通常料金が発生します。会社で試す場合も、最初に請求アラート(AWS Budgets)を設定しておくのが鉄則です。設定方法の考え方は第4章で説明します。

3-6事前に見積もる ── AWS Pricing Calculator

AWSは、AWS Pricing Calculatorという無料の見積もりツールを公開しています。使うサービス、リージョン、サイズ、稼働時間、データ量を入力すると、月額の見積もりが出ます。見積もり結果はURLやPDFで共有できるので、稟議書や予算申請の添付資料として使えます。

非エンジニアが一から入力するのは難しいですが、エンジニアが作った見積もりを見るときには、次の3点を確認すると会話がかみ合います。

  1. 稼働時間の前提:24時間365日なのか、平日日中だけなのか(費用が3倍以上違う)
  2. データ転送量の前提:外に出ていくデータを見積もっているか(抜けやすい)
  3. 割引の前提:通常料金なのか、1年・3年の予約割引を見込んでいるか(前払いが発生するか)

3-7請求と支払い ── 円建て、消費税、適格請求書

ここからは、経理・総務の方にとっていちばん実務的な部分です。

請求のサイクル

利用料は毎月1日から月末までで締められ、翌月初めに請求が確定します。月の途中でも、AWSの管理画面(請求コンソール)で「今月ここまでの利用額」と「月末の予測額」をいつでも確認できます。

契約相手と消費税

日本のアカウントの場合、2022年2月1日以降、契約・請求の相手はアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(AWSジャパン)です。そのため、AWSの利用料には日本の消費税(10%)が課税され、請求書にも税額が記載されます。AWSジャパンは適格請求書発行事業者として登録されており(登録番号 T6011001106696)、管理画面から適格請求書(インボイス)の要件を満たす請求書を取得できます。

ただし、一部の商品(AWS Marketplaceで購入する他社製品の一部など)は、米国法人から別途請求される場合があります。請求書の発行元を確認する習慣をつけましょう。

支払い方法と通貨

支払い方法通貨特徴
クレジットカードドルまたは円(管理画面で切替可)個人や小規模利用の標準。円建てを選ぶとAWS側の為替レートで月末に換算される。
請求書払い(銀行振込)ドルまたは円(要申請)一定規模以上の法人向け。AWSに申請して有効化する。支払いサイトが設定される。
パートナー(請求代行会社)経由円国内のAWSパートナーが請求をとりまとめる。円建て請求書・国内サポート付き。手数料や独自の割引がある(第5章)。

経理・総務の目線

為替:料金はドルで計算されるため、円建て支払いを選んでも、換算レートは毎月変わります。予算は「ドル建ての見込み × 想定レート」で立て、実績との差は為替要因と利用量要因に分けて見ると、説明がしやすくなります。

勘定科目:法律上の決まりはなく、会社の方針によります。「通信費」「支払手数料」「業務委託費」「サーバー利用料」などの科目を使う例が多く、重要なのは毎月同じ扱いにすることです。Marketplaceの他社ソフトはソフトウェア利用料として分ける、といった運用も考えられます。

月次処理:請求確定は翌月初めなので、月末時点では管理画面の「今月の利用額」をもとに未払計上するのが一般的です。

この章のまとめ

  1. 料金は従量課金。初期費用も解約金もなく、使った分をドル建てで月末に締めて支払う。
  2. 課金の単位は「時間・量・回数」の3つ。費用の大半は、動かし続けるサーバー・データベースと、外に出ていくデータ転送。
  3. 止め忘れ、消し忘れ、データ転送、Marketplaceの他社製品が「思ったより高い」の主な原因。金額の大きい上位5行を毎月追う。
  4. 無料利用枠は2025年7月から「最大200ドルのクレジット・6か月」の方式に変わった。常時無料のサービスは別枠で続く。
  5. 日本のアカウントの契約相手はAWSジャパン(2022年2月〜)。消費税10%が課税され、適格請求書を取得できる。円建て支払いも選べるが、為替レートは毎月変わる。